
ウベ(紫山芋)のホピア · 写真: Obsidian Soul / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
ビノンドの旧正月:ティコイ・ホピア・丸い果物に込められた意味
フィリピンでは2012年から旧正月が特別休日となり、その日マニラのビノンドは正月の買い出し客であふれます。ティコイを卵にくぐらせて焼く食べ方、ホピアの種類、オンピン通りの正月市で買うものをまとめました。
フィリピンの旧正月とビノンド
フィリピンでは旧正月(春節)は中国系フィリピン人だけの祝日ではありません。2011年11月、ベニグノ・アキノ3世大統領の布告第295号が2012年1月23日の旧正月を特別休日に指定しました。布告は、旧正月が中国系フィリピン人にもほかのフィリピン人にも祝われる行事であり、ともに祝うことが中国系の人々との連帯の表れだと述べています。以後、毎年の大統領布告で休日が定められています。 そのため旧正月のころのビノンドは、マニラ中から来た人で混み合います。通りでは龍舞が披露され、正月用の餅や菓子、果物、開運グッズを買い求める人が押し寄せます。催しの日程は年ごとに変わるので、出かける前にマニラ市や現地メディアの案内を確認しましょう。
ティコイ:正月に贈り合うもち米菓子
旧正月の主役はティコイ。中国の年糕(ニェンガオ)と同じ食べ物で、名前は福建語の「甜粿(ティーコエ、甘い餅)」から来ています。もち米粉と砂糖で作るもちもちの菓子で、フィリピンでは親戚や友人への旧正月の贈り物として人気で、現地メディアは中国系でないフィリピン人もティコイを買い求めて贈るようになったと伝えています。 菓子に込められた意味も一緒に伝わっています。現地メディアは、ティコイのようなもち米菓子が「上がっていく運」と「家族の結びつき」を象徴すると紹介しています。年糕が中国語で「年々高く(年高)」と同じ音であること、かまどの神の口を粘る餅でふさいで天に家の悪口を言わせないようにしたという昔話も、年糕にまつわる由来として知られています。
ティコイの食べ方:卵にくぐらせて焼く
フィリピン式のティコイの食べ方で一番多いのは、薄く切って溶き卵にくぐらせ、フライパンで軽く焼くもの。外はカリッと、中はもちもちに仕上がり、甘い餅と香ばしい卵の衣がよく合います。朝食や午後のおやつ(メリエンダ)にコーヒーやお茶と一緒に食べる家庭が多いそうです。 箱入りでもらったティコイは固くなっていることが多いので、包丁で薄く切ると焼きやすくなります。厚く切りすぎると外だけ焦げて中が柔らかくならないので、弱火でじっくり焼くのがコツ。基本は白いティコイですが、正月市にはパンダンの香りやウベ(紫山芋)味など色や味の違うものも並びます。値段は大きさ次第で、2024年の現地報道では100ペソから500ペソまでさまざまな大きさが売られていました。
ホピア:「良い菓子」のいろいろな顔
正月の贈り物としてティコイと並んでよく買われるのがホピアです。福建からの移民が持ち込んだ焼き菓子で、名前は「良い菓子」と訳されます。インドネシアのバクピアと同じ系統のお菓子です。 生地は二通り。中国式パイのように薄い層が幾重にも重なるサクサクのタイプと、フィリピンでよく使われる柔らかいケーキ生地のタイプがあります。餡は緑豆のホピアン・ムンゴが基本で、砂糖漬けの豚の背脂と冬瓜にネギの香りを加えたしょっぱい餡のホピアン・バボイ、小豆餡のホピアン・ハポン、そして紫山芋ウベの餡が代表的。ウベのホピアは1980年代にビノンドのある中華食材店が初めて売り出したとされています。
オンピン通りの正月市で買うもの
旧正月が近づくと、オンピン通りとビノンド一帯の道端に正月市が立ちます。2024年の現地報道によると、主な品はティコイ、果物、開運グッズ。果物は丸いものが人気で、硬貨に似た丸い形が豊かさを呼ぶと考えられているためです。小さなかんきつのキアットキアット、ぶどう、オレンジ、大きなみかんのポンカンなどがキロ単位や個数単位で売られます。ブレスレットや金めっきの飾りといった開運グッズも多く、ブレスレットは100〜300ペソほどだったそうです。 食べ物では、金塊の形に包んだ餃子(富に「かぶりつく」)、長寿を願う麺、繁栄を呼ぶとされる生ルンピアが正月料理として紹介されています。当日と前日は人出が多く道も混むので、買い物は数日早めか朝早くに行くのが楽です。