
ラパス公設市場のバチョイ · 写真: Ralff Nestor Nacor / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
ラパス・バチョイ(La Paz Batchoy):市場の路地で生まれたイロイロの麺の系譜
豚の内臓と牛肉、エビの出汁に、カリカリの豚皮揚げをたっぷりのせた麺、ラパス・バチョイ。イロイロ市ラパス地区の公設市場から始まったこの麺の元祖論争、材料、食べ方をまとめました。
「食文化創造都市」イロイロが誇る麺
イロイロ市はパナイ島南東にある西ビサヤ地方の中心都市です。2023年10月31日、ユネスコ創造都市ネットワークの「食文化」分野にフィリピンの都市として初めて登録されたほど食で知られ、その代表料理として真っ先に挙がるのがラパス・バチョイ(La Paz Batchoy)です。 バチョイはフィリピン各地で見られる麺料理ですが、イロイロ市の一地区ラパスで生まれたこの元祖版が一番有名です。マニラなどルソン地方にも「バチョイ・タガログ」という同じ名前の豚モツ汁がありますが、麺が主役ではない別の料理なので、イロイロ式を指すときは必ず地名をつけてラパス・バチョイと呼びます。
誰が最初に作ったのか:食い違う元祖の話
ラパス・バチョイの起源には定説がありません。ラパス公設市場の内外の老舗がそれぞれ元祖を名乗っており、資料によって、1920年代初めに開いた店が最初という説、1938年にある商人がスープ・麺・牛肉・豚肉を合わせて初めて作ったという説(地元紙サンスター報道)、1945年に市場内で一杯20センタボで売り始めた店が広めたという説が並んで伝わっています。 確かなのは、この麺がラパスの中国系コミュニティと深く結びついていることです。「バチョイ」という名前も「ひき肉」または「肉の汁」を意味する福建語(閩南語)から来たという説明があり、1938年説では、最初は冗談で「バッツ」と呼び、のちにチャプスイの「チョイ」をつけたという話も伝わります。
一杯に入っているもの:モツ、牛肉、エビ出汁、チチャロン
ラパス・バチョイの土台は丸い卵麺「ミキ(miki)」です。そこに豚のレバー・脾臓・腎臓・心臓などの内臓と薄切りの牛肉をのせ、エビのスープを注ぎます(資料によっては鶏ガラスープがベースともされます)。最後に細かく砕いた豚皮揚げ「チチャロン」と刻んだリーキをたっぷり散らし、店によっては生卵を落とします。 味の中心はスープです。エビのスープのうま味に内臓と肉のコクが加わって、塩気がありつつ香ばしく、チチャロンがスープに溶け込んでこってりした風味を加えます。最初はカリカリだったチチャロンがだんだんスープを吸って柔らかくなる変化も、この麺を食べる楽しみの一つです。
食べ方:混ぜて、味を整えて、スープまで
器が出てきたら、まず上にのったチチャロンとネギ、生卵を麺と一緒に上下に混ぜます。卵は熱いスープの中で半熟になり、スープをまろやかにしてくれます。卓上には醤油や魚醤、唐辛子、刻みニンニクなどの調味料が置かれていることが多いので、一度味見してから好みで足しましょう。 チチャロンのカリカリ感を楽しみたいなら、一度に全部混ぜず、少しずつスープに浸しながら食べる方法もあります。バチョイの本当の味はスープにあるので、麺を食べ終えたら残ったスープまで飲んでみてください。地元では朝から深夜まで、いつでも食べる食事であり、おやつでもあります。
旅のヒント:ラパス市場と1月のバチョイ祭り
元祖の雰囲気を味わいたいなら、イロイロ市中心部の北にあるラパス公設市場の一帯を訪ねてみてください。市場の内外にバチョイを出す老舗食堂が集まっています。市場の建物の改修中は仮設市場で営業していた記録もあるので、訪問前に場所を確認しておくと安心です。市内各所やショッピングモールでも気軽に味わえます。 1月にイロイロ市最大の祭り、ディナギャン・フェスティバルが開かれる期間には、2020年からバチョイ祭りも同時開催され、さまざまな店が腕を競います。この時期は市内がとても混むので、宿は早めに押さえましょう。同じ町のもう一つの名物スープ、パンシット・モロと一日で食べ比べるのも、イロイロらしい旅の仕方です。