歴史
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イロイロのパンシット・モロ · 写真: Mhlayson / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

イロイロのパンシット・モロ · 写真: Mhlayson / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

フィリピンイロイロ

パンシット・モロ(Pancit Molo):麺のない「パンシット」、華人の町モロが残したワンタンスープ

名前には麺を意味する「パンシット」がつくのに、器の中に麺はありません。かわりに花のように包んだ豚肉ワンタンが、澄んだ鶏スープに浮かんでいます。イロイロ市モロ地区で生まれたこのスープの由来と食べ方をまとめました。

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麺がないのになぜ「パンシット」なのか

フィリピンで「パンシット」は麺料理全般を指す言葉です。ところがパンシット・モロの器には、想像するような麺は入っていません。かわりに豚肉の餡を包んだワンタンと、餡を包まずスープの中でひらひら漂うワンタンの皮が入ります。この薄い皮こそが「麺」の役割をしていると説明されます。 小麦の生地を薄くのばした皮は広い意味では麺と同じ材料で、中国料理の影響でフィリピンに入ってきた料理であることから、パンシットの名がついたと理解されています。そのためパンシット・モロはよく「フィリピン式ワンタンスープ」と紹介され、麺料理というより澄んだスープ餃子に近いものです。

モロ地区:17世紀の華人の町から

料理名の「モロ」はイロイロ市の地区の名前です。フィリピンのメディアによると、モロは17世紀(百科事典によれば1637年)に華人の居住区として生まれた町で、19世紀には学問と文化の中心地として名を馳せました。今もゴシック様式の教会や広場、古い邸宅が残り、イロイロ旧市街観光の主要コースになっています。 パンシット・モロがこの地区で生まれたことは多くの資料で一致していますが、誰がいつ最初に作ったかについて確かな記録は見つけにくいのが実情です。それでも、中国式ワンタンをもとにした料理が、華人の多かったモロで地元の味に合わせて定着したという流れは自然に理解できます。その後、イロイロを代表するスープとしてフィリピン全土に広まりました。

花のように包んだワンタンと澄んだスープ

パンシット・モロのワンタンの餡はひき肉の豚肉が基本で、裂いた鶏肉やエビを混ぜることも多いです。皮に餡をのせて口をすぼめて包むと、スープの上に小さな花が咲いたように見えることもあります。比べられる料理としては、フィリピンでもおなじみの中国式蒸し餃子「シオマイ」がよく挙げられます。 スープは鶏肉と鶏ガラでとった澄んだ出汁が中心で、器に盛るときに裂いた鶏肉も加えます。仕上げに刻みネギとカリッと揚げたニンニクをのせるのが一般的。揚げニンニクの香ばしさが、淡白なスープにくっきりした印象を残します。

いつ食べるのか:祝祭日のおもてなし料理

イロイロの人にとってパンシット・モロは、祝祭日の食卓、とくにクリスマスや復活祭のごちそうに並ぶおもてなし料理です。ワンタンを一つ一つ包まなければならず手間がかかるので、家族が集まって一緒に作ることが多いです。そのためか、食堂や屋台のものより家で作ったものにこそ「家の味」が宿ると言う人が少なくありません。 2011年には当時のベニグノ・アキノ3世大統領がイロイロを訪れ、このスープを「おいしい」と褒めたことが知られ、地域の観光PRにも一役買いました。今では食堂や屋台で一年中食べられ、澄んだ温かいスープなので、雨の日や朝食に頼む人も多いです。

旅のヒント:モロ教会の散歩と一緒に

パンシット・モロはイロイロ市内のどこでも気軽に味わえますが、名前のふるさとモロ地区を歩いてから食べると、いっそう思い出に残ります。モロ広場と教会の周りを散歩し、古い邸宅の一帯を見て回ってから、近くの食堂で一杯というプランがおすすめです。 注文するときは、ワンタンだけの基本形のほか、鶏肉たっぷりのもの、ほかの料理と組み合わせたセットなど、店によって内容が違うのでメニューを確認しましょう。スープは淡白な方なので、好みでカラマンシーを搾ったり、魚醤で味を足したりしてもいいでしょう。同じ日にラパス・バチョイ、酸味のスープKBLまで、イロイロの汁物三種を食べ比べるのもおすすめです。

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