
タボンタボンと在来柑橘ビアソンを添えた北ミンダナオ風キニラウ · 写真: Lokalpedia / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
カガヤン・デ・オロのシヌグラウ:炭火焼き豚バラと生魚がひと皿に、千年続くキニラウの町
ミンダナオ北部カガヤン・デ・オロを代表する料理は、炭火焼きの豚バラと生魚のキニラウを合わせたシヌグラウです。千年前の遺跡からも見つかった秘密の材料タボンタボン、カガヤン・デ・オロ風の味付け、食べ方と注文のコツをまとめました。
シヌグラウとは
シヌグラウ(Sinuglaw)は二つの料理名を合わせた言葉です。一つはセブアノ語の「炭火で焼く」から来たシヌグバ(sinugba、炭火焼き)、もう一つは生魚を酢と柑橘の果汁で和えるフィリピン式の生魚料理キニラウ(kinilaw)です。炭火で焼いた豚バラ肉を切って魚のキニラウと混ぜ合わせたものがシヌグラウで、香ばしさと酸味、肉の脂がひと口で味わえます。 ビサヤやミンダナオの各地で食べられる料理ですが、ミンダナオ北部の港町カガヤン・デ・オロ(Cagayan de Oro)はこれを街の代表料理として打ち出しています。地元の料理紹介でも、シヌグラウはカガヤン・デ・オロを代表する料理としてよく挙げられます。
千年の生魚料理、キニラウ
キニラウはフィリピンで最も古い調理法の一つとされます。ミンダナオ北東部ブトゥアンのバランガイ(古代船)遺跡(10〜13世紀)からは、半分に割ったタボンタボンの実と、角切りにしたように切られた魚の骨が一緒に出土しました。そのため、この調理法は少なくとも千年の歴史があると考えられています。文献では、1613年にスペイン人宣教師がまとめたタガログ語辞書に初めて登場します。 名前のもとは「生で食べる」という意味のビサヤ語の動詞キラウ(kilaw)です。カガヤン・デ・オロのキニラウは、今に伝わるキニラウの中で最も古い形の一つとされます。その中心にあるのが、遺跡からも見つかった実、タボンタボンです。
秘密の材料タボンタボン
タボンタボン(tabon-tabon、学名Atuna racemosa)はミンダナオでキニラウに昔から使われてきた在来の木の実で、見た目はフィリピンでチコと呼ばれるサポジラに似ているそうです。中身を削って汁を搾りキニラウに加えると、渋みが酢のとがった酸味を和らげ、魚の生臭さを消してくれると説明されます。 カガヤン・デ・オロ風の味付けには、タボンタボンの汁とともにココナッツ酢、地元のライム、玉ねぎ、ショウガ、唐辛子が入り、ビアソン(biasong)のような在来の柑橘を添えることもあります。魚は資料によって異なります。ウィキペディアはシヌグラウにはふつうマグロを使うと書き、フィルスターのカガヤン・デ・オロの食の記事は現地でマラスギ(malasugi)と呼ぶメカジキを使うと紹介し、クロカジキを使うという紹介もあります。いずれにせよ、身が締まった新鮮な魚が基本です。
食べ方と注文のコツ
シヌグラウはご飯のおかずとしても、夜の酒の肴としてもよく食べられます。焼いた豚バラの脂と香ばしさが生魚の酸味を包み込むので、魚と肉を一緒にすくって食べるのがいちばんです。味付けに唐辛子とショウガが入っていて、後からじわりと辛いことも覚えておきましょう。 店では「シヌグラウ」と言えばすぐ通じ、魚だけがよければ「キニラウ」を頼みます。どの魚を使っているか聞くと、その日入った魚を教えてくれる店も多いです。生魚の料理なので、衛生面が気になるならお客が多く食材の回転が速い店を選ぶと安心です。店ごとに魚や味付けの加減が少しずつ違うので、余裕があれば二、三軒食べ比べてみるのもおすすめです。
カガヤン・デ・オロで一緒に味わいたいもの
カガヤン・デ・オロは北ミンダナオの玄関口なので、周辺地域の料理も集まります。シヌグラウと並んでよく紹介されるのがフンバ(humba)で、ここでは豚バラ肉を甘い醤油と黒豆のソースでじっくり煮込む作り方が知られています。海の向こうのカミギン島から来たスロル(surol)は、鶏肉をココナッツミルクと在来のオレガノで煮込んだスープ料理です。 いろいろな炭火焼きを丸い竹のざる(ビラオ)にまとめて盛る出し方も見られます。海辺の街らしく魚が新鮮で炭火焼き文化も根強いので、シヌグラウを皮切りに焼き物をいくつかとスープを一品添えれば、この街の食卓の雰囲気がよくわかります。