
漬物店に並ぶ色の濃い奈良漬 · 写真: daveyll (David Loong) / CC BY-SA 2.0 (Wikimedia Commons)
奈良漬:平城京の木簡にも登場する粕漬、1300年続く奈良の味
奈良漬は、塩漬けした野菜を何度も新しい酒粕に漬け替えて作る漬物です。奈良時代の木簡の記録から名前の由来、食べ方、アルコールと運転の疑問までまとめました。
奈良漬とはどんな漬物か
奈良漬は、白瓜やきゅうり、小さなすいか、しょうがなどの野菜をまず塩漬けにし、酒造りで残った酒粕に漬けて作る漬物です。ポイントは一度で終わらないこと。粕に漬けた野菜を何度も新しい酒粕に漬け替えてじっくり味をしみ込ませ、前年に使った酒粕を再利用することもあります。 今店頭に並ぶものは透き通った琥珀色が多いですが、4年から十数年漬ける伝統的な製法では黒に近い色に仕上がります。味は甘じょっぱく、酒粕ならではの濃い香りがあります。シャキッとした歯ごたえが残っているものが良い奈良漬とされます。
平城京の木簡に残る「粕漬の瓜」
奈良漬のルーツは、奈良が都だった平城京の時代までさかのぼるといわれます。平城京跡の長屋王邸跡から出土した木簡の中に、貢納品の荷札に「加須津毛瓜(かすづけうり)」、つまり粕に漬けた瓜を意味する文字が書かれたものがあり、奈良漬の前身として紹介されています。文化庁の資料によると、年紀のある長屋王家木簡は710年から716年のものです。 その後、927年に完成した法令集『延喜式』にも瓜を粕漬にした記録があります。こうした記録から、奈良漬は「1300年の歴史を持つ漬物」と紹介されることがあります。
「奈良漬」の名と家康のお気に入り
「奈良漬」という名が初めて確認できるのは、1492年の公家の日記『山科家礼記』に出てくる「ナラツケ」だとされています。1603年にポルトガル人宣教師らが刊行した『日葡辞書』にも「奈良の漬物の一種」と載っており、この頃にはすでに広く知られた名前だったことがわかります。名前に「奈良」がつくのは、奈良が酒造りの中心地だったからだという説明が一般的です。 江戸時代初めの慶長年間(1596〜1615年)には、奈良中筋町の漢方医・糸屋宗仙が白瓜の粕漬を「奈良漬」の名で売り出し、評判になったと伝わります。大坂の陣の際に徳川家康に献上して気に入られ、医者をやめて江戸に呼ばれ、幕府御用の奈良漬商人になったという話も残っています。
鰻の相棒、お茶漬けからクリームチーズまで
奈良漬は薄く切ってご飯のおともにするのが基本です。日本で最もよく知られた組み合わせは鰻の蒲焼きで、脂の多い鰻の合間に奈良漬をひと切れ食べると口がさっぱりするとして、添えられることが多くあります。鰻屋で小皿に奈良漬が出てくるのはこのためです。 江戸時代の五代将軍綱吉の頃には、江戸・浅草寺の門前で奈良漬をのせたお茶漬けが評判になったという記録もあります。最近はクリームチーズと合わせる楽しみ方もあり、2018年には奈良漬の粕床に漬けたクリームチーズも商品化されました。酒粕の香りが強いので、初めてなら薄切り一、二枚から試してみてください。
食べて運転しても大丈夫?そして買える場所
酒粕に漬けるため、奈良漬には少しアルコールが残っています。アルコール健康医学協会の説明では、アルコール度数5%の奈良漬の場合、酒気帯び運転の基準値に達するには約60切れ(約400g)を食べる必要があるとされ、50gを食べて20分後に走行実験をしたところ呼気中のアルコール濃度はゼロだったという実験結果もあります。普通におかずとして食べる量なら心配はいりませんが、一度に大量に食べるのは避け、子どもやお酒に弱い人は気をつけたほうがよいでしょう。 2023年時点で奈良県の主な奈良漬事業者は約30あり、うち11社が奈良市に集まっています。ならまちや近鉄奈良駅周辺の商店街、奈良公園近くのみやげ物店で手軽に見つかり、贈答用に包装された商品が多いのでおみやげにも向いています。