歴史
かごしま黒豚のとんこつ · 写真: 聖石大戦ぶぅぶぅ / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

かごしま黒豚のとんこつ · 写真: 聖石大戦ぶぅぶぅ / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

日本鹿児島

かごしま黒豚と薩摩のとんこつ:ラーメンではない「骨付き豚の煮込み」の物語

鹿児島で「とんこつ」と言えば、ラーメンではなく骨付き豚を焼酎と味噌、黒砂糖でじっくり煮込んだ料理のこと。琉球から来たという豚、バークシャー種の黒豚ブランドが守られた経緯、食べ方をまとめました。

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なぜ鹿児島は早くから豚を食べたのか

肉食を避ける風潮が強かった江戸時代の日本でも、薩摩(現在の鹿児島)は早くから豚を飼い、食べる文化が根づいた土地として知られています。日本語版ウィキペディアによると、1546年のポルトガル人船長ジョルジェ・アルヴァレスの報告にすでに鹿児島・山川で豚を飼っているという記述があります。 鹿児島の豚のルーツとして最もよく語られるのは琉球(現在の沖縄)です。1609年に薩摩藩が琉球王国に侵攻した際に豚を持ち帰ったという説があり、農林水産省の資料もかごしま黒豚の始まりを薩摩藩18代当主・島津家久の時代に琉球から導入された豚と紹介しています。一方で、16世紀末に坊津に住み着いた明の人々が豚肉食を広めたという見方もあり、琉球経由が有力ながら確定はしていないそうです。

バークシャー種と「かごしま黒豚」ブランド

今日の「かごしま黒豚」は、イギリス原産のバークシャー種を指します。農林水産省の資料によると、明治時代にイギリスのバークシャー種と交配して改良され、四肢と鼻すじ、尾の先が白い「六白」が特徴です。サツマイモや魚のあらを与える飼育法を広めた獣医師の園田兵助は「かごしま黒豚の父」と呼ばれているそうです。 しかし1960年代以降、成長の早い白豚が主流になると黒豚は大きく減り、1985年には繁殖用の雌豚に占める黒豚の割合が3%にまで落ち込みました。1970年代には白豚に切り替えるかどうかで長い議論がありましたが、当時の知事が黒豚を守る決断をしたと伝えられます。その後1992年4月に証明制度、1999年に「かごしま黒豚」の商標登録が行われ、ブランドが確立しました。

もう一つの「とんこつ」:骨付き豚の煮込み

日本で「とんこつ」と言えばふつうは福岡の豚骨スープのラーメンを思い浮かべますが、鹿児島には同じ名前のまったく別の郷土料理があります。骨付きの豚あばら肉(スペアリブ)をまず焼き色がつくまで焼き、芋焼酎をふりかけて強火でアルコールを飛ばし、水を加えて煮てから大根、ゴボウ、こんにゃくを入れ、麦味噌と黒砂糖で時間をかけて煮込む料理です。農林水産省の資料によると、焼酎は豚の臭みを消し、肉をやわらかくしてくれます。 味の決め手は鹿児島の麦味噌。米が貴重だった土地なので麦味噌が一般的で、麹が多く塩分が控えめで甘みが強いとされます。そこへ黒砂糖まで加えて甘辛く煮込みますが、甘みを効かせることが客をもてなす心とされたという説明もあります。

薩摩武士の野外料理と西郷隆盛

薩摩のとんこつは、薩摩武士が狩り場や戦場で作って食べた野外料理が始まりと伝えられています。農林水産省の資料や多くの解説がこの話を紹介していますが、それを直接裏付ける古い記録まで確認されているわけではないので、言い伝えとして受け取るのがよいでしょう。 鹿児島の人が誇らしげに付け加えるのが、明治維新の立役者・西郷隆盛の好物だったという話です。英文学者で作家の吉田健一は、とんこつを「武骨に見え、繊細な料理」と評したといいます。決まった季節はなく一年中家庭で作られる料理で、学校給食にも登場し、家ごとに具材や味つけが少しずつ違います。同じ農林水産省のサイトには、豚肉を麦味噌や砂糖と炒りつけた常備菜「豚みそ」も鹿児島の料理として紹介されています。

どこで、どう食べる?

かごしま黒豚ととんこつは、鹿児島市の繁華街・天文館一帯や鹿児島中央駅周辺の郷土料理店、居酒屋で味わえます。メニューに「とんこつ」「豚骨」とあればラーメンではなく煮込み料理のことが多いので、迷ったら写真を確かめるか尋ねてみましょう。 黒豚そのものを楽しむなら、薄切り肉をだしにさっとくぐらせるしゃぶしゃぶと、とんかつが旅行者に特に人気です。脂が甘くさっぱりしているという声が多く、しゃぶしゃぶは肉に火を通しすぎないのがコツ。お酒を合わせるなら、とんこつを煮るときにも使う芋焼酎がよく合います。メニューに「黒豚」とあってもブランド認証を受けたものかどうかは店によって違うので、気になる人は産地表示を確認してみてください。

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