
札幌の味噌ラーメン · 写真: ノボホショコロトソ / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)
札幌味噌ラーメン:ラードで蓋をした熱いスープと炒め野菜、1950年代生まれの冬の一杯
札幌ラーメンといえば味噌を思い浮かべますが、1960年頃まで札幌のラーメンはほとんど醤油味でした。味噌ラーメンがいつどのように生まれたのか、なぜスープに脂の膜が張り野菜を炒めてのせるのか、現地で注文するときのポイントをまとめました。
醤油から始まったラーメンの街
札幌ラーメンのルーツは1922年にさかのぼります。この年、市内の中華料理店で山東省出身の料理人が、手延べの麺をスープに入れた「肉絲麺」を出したのが始まりとされています。その後日本人向けの味に改良されましたが、戦時中の物資統制で原料が手に入らず、店は姿を消しました。 戦後の1946年、引き揚げてきた人たちがすすきのの屋台で豚骨を濃く煮出したラーメンを売り始め、1951年には8軒のラーメン店が集まった横丁が生まれます。これが今の「ラーメン横丁」の出発点です。ただしこの頃の札幌ラーメンは主に醤油味で、味噌ラーメンはまだ登場していませんでした。
味噌ラーメンの誕生:1955年か1958年か
味噌ラーメンは、札幌のあるラーメン店の店主がスープに味噌を溶いて作ったのが始まりとされています。誕生の年は資料によって異なり、日本語版ウィキペディアなどは1955年、札幌観光協会は1958年と紹介しています。同じ頃、市内の製麺所が味噌スープに合うよう加水を多くして熟成させた中太の縮れ麺を開発し、この麺が今も札幌味噌ラーメンの定番として使われています。 最初から看板メニューだったわけではなく、正式にメニューに加わったのは1963年という記録があります。その後雑誌での紹介などで名が知られるにつれ、醤油中心だった札幌ラーメンの顔は少しずつ味噌へと変わっていきました。
一杯の構造:ラードの蓋、炒め野菜、挽肉
札幌味噌ラーメンを初めて食べると、スープがなかなか冷めないことに驚きます。スープの表面にラードを浮かべて熱を逃がさないようにするもので、氷点下になる札幌の冬に合わせた工夫とされています。最初の一口は気をつけて。 もう一つの特徴は中華鍋で炒めてのせる野菜です。タマネギ、キャベツ、モヤシを強火で炒めてスープと合わせますが、この炒め野菜は味噌ラーメンを生んだ店主自身が考案したといわれます。モヤシは終戦直後、高価だったタマネギの代わりに使われた食材でもありました。味噌ラーメン発祥の店が挽肉を使っていたため、今も札幌では味噌に挽肉を合わせる店が多くあります。
札幌から全国へ
味噌ラーメンが全国に知られるうえで、インスタントラーメンの力は大きなものでした。1960年代半ばには東京にも「札幌ラーメン」を掲げる店が増え、1967年創業の味噌ラーメンチェーンが全国に広がります。さらに1968年には札幌の味をもとにしたインスタントの味噌ラーメンが発売され、まだ味噌味のラーメンになじみのなかった全国の家庭にまでその味が届きました。 2001年には「北海道のラーメン」が北海道遺産に選ばれています。今では北海道に札幌の味噌、函館の塩、旭川の醤油と、街ごとに違うラーメンがあることもよく知られています。面白いのは、札幌のラーメン店の多くが味噌専門ではなく、醤油・味噌・塩の3種類をそろえていることです。
札幌での食べ方と注文のコツ
旅行者がいちばん見つけやすいのは、すすきののラーメン横丁一帯です。狭い路地に味噌ラーメンの店が並び、夕食後やお酒のあとに立ち寄るのにぴったりです。札幌駅周辺や新千歳空港にもラーメン店が集まるエリアがあり、移動の合間に一杯楽しめます。 バターやコーンをのせた「コーンバターラーメン」は観光客に人気ですが、札幌駅前の一軒から始まったメニューで、地元では必ずしも定番ではないそうです。初めてならまず基本の味噌を味わい、次にバターを足してみるのがおすすめ。店先に製麺会社の名前が入った暖簾がかかっていることが多いのは、新しく開店した店に製麺会社が暖簾を贈る習慣があるためです。