
透き通る活イカ刺し · 写真: Miya.m / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
「イカのまち」函館:透き通る活イカ刺しから森駅のいかめしまで
函館市の「市の魚」はイカです。とれたてのイカをすぐさばく透き通ったイカ刺し、祭りで街じゅうが踊る「いか踊り」、近くの森駅で生まれた駅弁いかめしまで、函館とイカの深い縁と近年の不漁、味わい方をまとめました。
市の魚がイカの街
函館は「イカのまち」と呼ばれます。市を象徴する「市の魚」もイカで、主役は日本でいちばんよく食べられているスルメイカです。函館沖の津軽海峡一帯は昔からイカ漁で知られ、夜の海に並ぶイカ釣り漁船の漁火は函館の夜景の一部とされてきました。 イカへの愛は祭りにも表れています。1935年、大火で傷ついた市民の慰撫と復興を願って始まった「函館港まつり」では、1981年から「いか踊り」が踊られています。両手を頭の上で合わせてイカの形を作る振り付けが特徴で、夏になると大勢の市民が通りを練り歩きながらこの踊りを踊ります。
透き通る活イカ刺し
函館でぜひ食べたいのが、生きたイカをその場でさばいた「イカ刺し」です。さばきたてのイカは身がガラスのように透き通り、噛むとコリコリした弾力とほのかな甘みがあります。時間がたつと白くなるため、この透明感が鮮度の証とされます。細く麺のように切った「イカソーメン」もよくあるメニューです。 一般的には醤油におろし生姜を添えて食べます。胴を刺身にしたあと、残ったゲソを焼きや天ぷらにしてくれる店も多くあります。いけすから揚げたイカをその場でさばく様子が見られる店もあり、旅行者にとってはひとつの見どころです。ただし活イカはその日の水揚げ次第で、ない日もあるので事前に確認すると安心です。
森駅のいかめし:米不足の時代の知恵
函館旅行で一緒に出会うイカ料理が「いかめし」です。ゲソとワタを取ったイカの胴にもち米とうるち米を混ぜた米を詰め、醤油ベースの出汁で炊き上げたもので、函館から北へ鉄道で約50kmの森駅の駅弁として有名です。 いかめしは1941年、森駅の駅弁業者が考案しました。戦時中の食糧統制で米が不足していたころ、ちょうど豊漁だったスルメイカを使い、米を節約しながら満足感のある料理を作ったのです。もち米入りで腹持ちが良いと評判になり、1966年に東京の百貨店で開かれた第1回の駅弁大会に出品、第2回で売り上げ1位となって全国的な名物になりました。
イカが減ったイカのまち
最近の函館には心配ごとがあります。イカが大きく減っているのです。北海道新聞の報道によると、函館市のスルメイカの年間漁獲量は1975年以降多くの年で3万トンを超えていましたが、2021年には1,989トンまで落ち込みました。2025年6月には道南のスルメイカの初競りが水揚げ不足で行えず、函館の市場が開設された1965年以来初めてのことでした。 原因の一つには海水温の上昇が挙げられ、函館ではイカよりブリの漁獲が上回るという変化も起きています。いかめしも1970年代のイカの不漁時にはニュージーランド産を使ったことがあるほど、イカはいつも海の事情に左右される食材でした。だからこそ、今函館で食べる活イカの一皿は以前よりも貴重な味です。
函館でイカを味わうには
旅行者がイカに出会いやすいのは、函館駅のすぐ前にある朝市一帯です。市場内には2003年から生けすのイカを自分で釣り上げる「イカ釣り堀」があり、釣ったイカをその場で刺身にしてもらう体験が人気です。朝市の食堂では活イカ刺しやイカをのせた海鮮丼を選べます。 いかめしは森駅で買うのが本場ですが、函館市内の駅や土産物店、空港でも手に入りやすく、お土産や車内の駅弁にぴったりです。温めるといっそうおいしくなります。活イカは漁の状況で値段が大きく変わり、ない日もあるので、メニューの「時価」表示を確かめてから注文しましょう。