
名古屋の手羽先唐揚げ · 写真: Geographer / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
名古屋の手羽先:出汁用だった手羽が酒の肴の王様になるまで
名古屋の居酒屋で「手羽先」と言えば、部位ではなく、カリッと揚げて甘辛いタレと胡椒、ゴマをまとわせた手羽先の唐揚げのこと。1963年に始まった誕生の物語と味の特徴、骨だけをきれいに残す食べ方をまとめました。
名古屋で「手羽先」は料理の名前
手羽先とは、もともと鶏の翼の先の部分を指す言葉です。ところが名古屋とその周辺の中京圏では、この言葉を聞くとたいてい部位ではなく一つの料理を思い浮かべます。手羽先を揚げてタレを塗り、塩、胡椒、白ゴマなどを振った「手羽先唐揚げ」です。 表面はパリパリで、甘辛いタレに胡椒の刺激が加わり、思わずビールが欲しくなる味です。そのため主に居酒屋で酒の肴として食べられ、ひつまぶしや味噌カツと並ぶ名古屋めしの代表格とされます。アメリカのバッファローウィングと比べられることもありますが、辛いソースに絡めるのではなく、タレを薄く塗ってスパイスで味を決める点が違います。
1963年、熱田で始まった物語
手羽先唐揚げの元祖とされるのは、名古屋のある鶏料理店です。店主はそれ以前、福岡県北九州市の小倉で、鶏の半身を揚げて秘伝のタレをつけた「ターザン焼き」という料理を出していたといいます。 1963年に名古屋市熱田区で店を開いた店主は、当時は出汁を取るのにしか使われていなかった手羽先を揚げ、同じようにタレをつけて出したところ、客に受けて定着したと伝えられます。なぜ手羽先を使ったのかは話が分かれます。発注ミスで丸鶏が欠品し代わりに手羽先を出したという説と、仕入れ先で手羽先の山を見て思いついたという説があり、資料によって異なります。捨てられるも同然だった安い部位が、今では名古屋を代表する味になったわけです。
味の決め手:タレとスパイス
名古屋の手羽先は、厚い衣をつけずにそのまま揚げて皮をパリッとさせ、醤油ベースの甘辛いタレを塗り、塩、胡椒、白ゴマなどを振って仕上げます。タレはどっぷり浸すのではなく表面に薄くまとわせる程度なので、手で持って食べてもカリカリ感が長持ちします。 店ごとに個性がはっきりしているのも楽しいところです。元祖の流れをくむ店は甘いタレとゴマの香ばしさが前に出る傾向があり、舌がしびれるほど胡椒を強く効かせたスパイシーな味で知られるチェーンもあります。二、三軒はしごして食べ比べる旅行者も少なくありません。塩気と香りが強いのでビールやハイボールとの相性は抜群で、一皿に何本も出てくるので仲間とシェアするのにも向いています。
骨だけきれいに残す食べ方
手羽先は手で持って食べる料理です。まず手羽をV字に持って真ん中の関節を折り、肉の多い手羽中と先のとがった部分に分けます。先の部分はほとんど骨と皮なので、パリパリの皮だけを楽しめば十分です。 手羽中には骨が2本入っています。両端を持って前歯でしごくように肉をかじり取ると、肉がするりと外れて骨だけが残ります。こうしてきれいに食べるのが一種のコツとされています。最初に関節を思い切って折るのがポイントです。タレで手がべたつくので、たいていの店ではおしぼりを多めにくれ、骨入れの器がテーブルに置かれることもあります。注文は丸鶏単位ではなく、手羽の本数単位が一般的です。
どこで食べるか
手羽先は名古屋市内のどこでも気軽に味わえます。手羽先を看板メニューにした居酒屋チェーンが名古屋駅周辺や栄、錦などの繁華街に多く、普通の居酒屋でも定番メニューに入っていることがほとんどです。本番は夜なので、昼はひつまぶしや味噌煮込みうどん、夜は手羽先とビールで締めるという旅程が人気です。 持ち帰りできる店も多く、ホテルの部屋でビールと一緒に楽しむのもおすすめです。初めてなら、元祖系の甘い味と胡椒の効いたスパイシーな味を一度ずつ食べて好みを見つけてみてください。タレには醤油と砂糖が使われているので、食事制限がある場合は注文前に確認しましょう。