
高山の中華そば(高山ラーメン) · 写真: Ocdp / CC0 (Wikimedia Commons)
高山ラーメン:地元では「中華そば」、リヤカー屋台から始まった澄んだ醤油ラーメン
飛騨高山の古い町並みを歩くと、「ラーメン」ではなく「中華そば」と書かれたのれんによく出会います。1938年のリヤカー屋台から始まったとされる高山ラーメンの歴史、スープとタレを一緒に煮込む独特の作り方、店選びのコツをまとめました。
「ラーメン」より「中華そば」と呼ぶ町
岐阜県北部の山あいの町・高山は、江戸時代の町家が残る「小京都」として有名ですが、地元の人のソウルフードとしてはラーメンも欠かせません。外では高山ラーメン、飛騨ラーメン、飛騨高山ラーメンと呼ばれますが、地元では「中華そば」、あるいは単に「そば」と呼ぶことが多く、蕎麦のほうはわざわざ「日本そば」と呼び分けることもあります。 店も「高山ラーメン」より「中華そば」と書かれたのれんを掲げるところが多く、岐阜県の観光案内でも店を探すときはこの名前を目印にするよう勧めています。映画「君の名は。」の舞台となった地域に近く、訪れる人が増えたことで「高山ラーメン」の名がより広まったとも言われます。
1938年、リヤカー屋台から始まった
高山ラーメンのルーツは、昭和初期に屋台の味として親しまれた「飛騨中華そば」とされます。岐阜県の観光案内や旅行ガイドによると、1938年(昭和13年)にある店がリヤカーを引く屋台で中華そばを売り出したのが始まりとして知られています。 その創業者はもともと高級料亭の板前で、東京・芝浦で料理修業をしていたころに中国人が作る麺料理を見て中華麺の打ち方を学び、屋台を引いたと伝えられます。ただしこの逸話は旅行メディアで紹介された話で、細かな内容は資料によって少しずつ異なります。その後市内に店が増え、2015年ごろの時点で高山市内でラーメンを出す店は30店ほどとされます。小さな町としてはかなりの数です。
スープとタレを一緒に煮込む独特の作り方
高山ラーメンの特徴は、鶏ガラをベースにした澄んだあっさり醤油スープと、極細のちぢれ麺です。最も独特なのは作り方で、一般的なラーメンはスープと醤油ダレを別々に作って丼で合わせるのに対し、高山ラーメンは最初からスープとタレを一緒に混ぜて煮込むのが伝統とされています。そのためスープ全体に醤油の香りがむらなく行き渡ります。 もちろん今は店ごとの違いも大きく、鶏のほかに魚介、野菜、しいたけでスープをとる店もあれば、カツオの香りが立つ真っ黒なスープで知られる店、地元の濃口醤油に魚醤を隠し味に加える店もあります。共通するのは、細いちぢれ麺があっさりしたスープをよく絡めることで、こってりした豚骨ラーメンとは正反対の淡麗な味わいです。
地元の人の中華そば文化
高山の人にとって中華そばは、観光客向けの名物である前に暮らしの中の食べ物です。岐阜県の観光案内によると、飲んだあとの締めに中華そばを食べる人が多く、大晦日の年越しそばに蕎麦ではなく中華そばを食べる家庭もあるそうです。 味を変える調味料をそろえている店もあります。酢やラー油を入れて味の変化を楽しむよう勧める店や、昆布酢をはじめ4種類の調味料を出す店もあるので、半分ほど食べたら少しずつ加えてみてください。チャーシューメンやワンタンメン、生卵・ゆで卵・味付け卵を選べる店もあります。老舗の中には現金のみの店やお酒を出さない店もあるので、あらかじめ知っておくと安心です。
どこで食べる?店選びのコツ
中華そばの店は、高山駅から歩いて行ける旧市街一帯、特に古い町並みの「さんまち」周辺に多くあります。朝市や古い町並みを巡ってから昼食に食べるのにちょうどいい動線ですが、人気店は昼どきに行列ができ、スープがなくなり次第早めに閉める店もあるので、早い時間が安心です。 店を選ぶときは「高山ラーメン」の看板だけを探すより、「中華そば」と書かれたのれんを目印にしてみてください。一杯の量はそれほど多くなくスープも軽めなので、飛騨牛の串焼きやみだらし団子などの食べ歩きと組み合わせる旅行者も多くいます。高山以外でも「高山ラーメン」のおみやげ用袋麺は買えますが、店ごとに違うスープの味は現地で食べ比べるのが一番の楽しみです。