
よく熟れた桃 · 写真: Jack Dykinga, USDA / Public domain (Wikimedia Commons)
鳥致院の桃:1908年の試験果樹園から始まった118年の桃の里
行政首都・世宗の北部にある鳥致院邑は、韓国有数の桃の産地です。1908年の試験果樹園から始まった鳥致院の桃の歴史、桃の花が文学を生んだ話、毎年7月に開かれる桃祭りとおいしい桃の選び方をまとめました。
世宗の旧中心地、鳥致院
世宗特別自治市は2012年7月1日、政府の省庁が集まる行政中心複合都市として発足しました。新しいマンションや官庁が並ぶ新都心とは違い、北部の鳥致院邑は旧燕岐郡の中心地で、古い市街地や伝統市場が残っている場所です。 鳥致院は早くから交通の要衝でした。1905年に京釜線が開通し、1921年にはここから清州へ向かう忠北線が分岐して、鳥致院駅は二つの路線が交わる鉄道の分岐点になりました。汽車で人と物が集まるこの町で育まれてきた代表的な特産品が桃で、「世宗の味」を語るとき鳥致院の桃は欠かせません。
1908年、試験果樹園から始まる
鳥致院の桃は1908年に栽培が始まったとされ、2026年時点で118年の歴史を掲げています。海外の農業専門メディアの報道によると、この年、農村振興庁の前身である勧業模範場が日本から持ち込んだ品種で鳥致院に試験果樹園を作ったことで商業栽培が始まり、その後周辺の農家がその品種を取り入れたことで、鳥致院は桃の産地として定着したといいます。 桃は昔の韓国語で「ポクサ」とも呼ばれ、今でもその花を「ポクサコッ」と呼びます。鳥致院の広い平野と低い丘に果樹園が増えるにつれ、春になると町全体が桃色に染まる風景がこの土地の象徴になりました。
桃の花が生んだ文学
鳥致院の桃の花の風景は昔から名高いものでした。1985年のある新聞記事は、4月下旬になると鳥致院周辺の桃畑が武陵桃源のような絶景になると紹介しました。武陵桃源は桃の花が咲き乱れる理想郷を意味する言葉なので、鳥致院にぴったりの表現といえます。 この美しい風景に感動した地域の文人たちが1955年に文学同人誌『白水文学』を創刊したという話も伝わっており、それほど鳥致院の桃が早くから地域の誇りだったことがわかります。花が散ると、実が熟すまで農家では袋かけや摘果など手間のかかる作業が続き、その成果が真夏の甘く香り高い桃となって返ってきます。
今の鳥致院の桃と7月の祭り
海外の農業メディアの報道によると、現在鳥致院では約600戸の農家が毎年約2,000トンの桃を生産しています。鳥致院の桃は糖度が高く果肉が柔らかいと評価され、夏になると桃を買いにわざわざ鳥致院を訪れる人が多くいます。 世宗市は毎年真夏に鳥致院桃祭りを開いています。2026年は第24回の祭りが7月24日から26日まで開かれ、前年は13万人が訪れたと報じられました。会場では桃の直売とともに公演や体験イベントが行われ、夜にはビールと鳥致院のパダク(ねぎをのせたフライドチキン)などの地元グルメを楽しむ夜のイベントも用意されます。祭りが7月下旬に開かれることからわかるように、鳥致院の桃を味わうなら真夏に訪れるのがいちばんです。
おいしい桃の選び方と楽しみ方
桃を選ぶときは、へたの周りまで色が均一に付き、持ったときに大きさの割にずっしりと重く、甘い香りが強いものがよいでしょう。指で強く押すとすぐに傷むので、目と鼻で選ぶのがマナーです。硬い桃と柔らかい桃は品種によって違うので、好みの食感を売り手に伝えれば合うものを選んでくれます。 桃は常温に1〜2日置くと香りがさらに立ち、食べる1〜2時間前に冷蔵庫に入れて少し冷やすと甘みが感じやすくなります。鳥致院邑の世宗伝統市場や地域農協の売り場、祭り期間中の直売所で買うことができます。桃は傷みやすいので、旅行中ならたくさん買うよりその日に食べる分だけ買うのがおすすめです。